忠臣蔵・急 ポリティクス/首

エイチエムピー・シアターカンパニー〈現代日本演劇のルーツⅨ〉『忠臣蔵・急 ポリティクス/首』
作:くるみざわしん
演出・舞台美術:笠井友仁

「現代日本演劇のルーツ」の目的は日本の伝統的な概念を再考することです。本シリーズ最新作『忠臣蔵・急 ポリティクス/首』は元禄時代の武士の姿をかり、現代の権力の問題を濃く描いています。『忠臣蔵・序』、『破』に続く今回は、切腹した浅野内匠頭の家臣である赤穂浪士が吉良上野介を討った後、江戸幕府から処分が下り、彼らが切腹するまでの約2か月間を描いています。江戸中の人々が主君の仇を討った赤穂浪士を「義士」と称えたため、幕府は彼らの処分に困っていました。そのような中でどのようにして赤穂浪士の処分は決まったのか。そして処分が下されるまで、大石内蔵助ら赤穂浪士は何をしていたのか。エイチエムピー・シアターカンパニーの『忠臣蔵 三部作』の完結編にして最高傑作です。 

演出 笠井友仁

序破と続いた忠臣蔵、いよいよ急。副題の「ポリティクス/首」の/は演算の記号で「スラッシュ」と読み、割り算を意味する。ポリテックスを首で割っているわけである。ポリティクスは日本語で「政治」。政治を首で割れるわけがないとお思いかもしれないが、果たしてどうだろう。政治とは落ちた首、落とされた首が積み上がった山、あるいは沈んだ沼ではないだろうか。首で割ったらカタチが崩れ、数字がはじき出される。政治という名で覆われて見分けがつかなくなっていた首のひとつひとつがくっきりと顔を見せ、目の前に浮かびあがる。その様相をとらえたくて書き上げた本作。忠臣蔵の完結をひとつの首にして現代の政治(ポリティクス)を割り、どんな答えを導くのか。その刹那に立ち会って欲しい。

作 くるみざわしん